年内に終わりたかった(その3)がとうとう年を越してしまった。
前回は実際の魚の引き力について調べたり、考えたりしてみた。
その力は魚の体重の2倍近くに及ぶことがあること、
しかし一方でその力は長くは続かず、
しかも魚が針に掛かった直後に限られることが
実験で示されていることも紹介した。
その間をなんとか耐え抜けば
細いラインで巨大な魚をものにすることはできるが
そこは釣り師の技量次第であろうと締めくくった。
大物の首振りや暴れに対しては
竿のしなりや釣り師の腕や腰の曲げ延ばし
などで交わすことができるが
ストロークが長い青物の突進に対しては
リールのドラグ機能に負うしかない。
ドラグの滑り出しをどの程度に設定するかも
不意の大物に対処す釣り師の技量の内であろうか。
名人釣り師なら獲物とのやり取りの中で
ドラグを締めたり緩めたりしながら
奴を次第に追い込んでいくが、
始めからラインブレーク寸前で
ドラグが滑り出すように設定しておくのも有効だ。
そこで、今回はドラグの設定を中心に考えてみたい。
おもしろいもので、
ドラグが出て行くという状況下は
釣り師のライン強力が魚の引きに負け
その立場が劣勢である時であるにも関わらず、
あのククックーというドラグの滑り音や
ジリジリジリというドラグサウンドを聞くと
釣り師は勝ち誇ったように奮い立ってしまう。
さてそのドラグの設定は
PEの強力の1/3~1/4が適当とよく言われるが
その根拠は如何に。
(五目漁師は腐っても元エンジニア、ハイッ!これですよ
と結果の数字だけを言われたところで
根拠がわからなければ鵜呑みにはしない)
で、ここは自分なりに検証してみよう。
ビシ釣りのラインシステムと違って
タイラバやエギングのそれは単純明快である。
つまり図に示すようにPE→リーダー→タイラバ(またはエギ)の3要素と
これらを接続する結びを考えれば良い。
根掛かりした場合にPEの高切れを防ぐために
通常はPEの強力>リーダの強力
(例えば、PEが1号ならフロロカーボンやナイロンのリーダーは
2.5号、または最大でも3号)とする。
五目漁師はPEとリーダーのつなぎにはFGノット、
リーダーとタイラバのつなぎはユニノット、
エギを頻繁に交換するエギングの場合には
パロマーノットで結んだ小型のスナップサルカンを経由して
エギをつないでいる。
結びの結束強度に関しては
ネット上にラインメーカーのものを始めとして
個人ブログの実験結果などが多くあるが、
結構ばらつきが大きい。
ここではFGノットは80%、ユニノットは75%としよう。
今、具体的にリーダを2.5号フロロカーボンとすると
その強力は4.5kg、
一方、PEのAVE.強力は6kg程度であるから
この場合のリーダーのPEに対する強力比は4.5/6(75%)程度である。
更に結束強度が75%のユニノットを含めたライン全体の破断強力は
PE(AVE.強力)のそれに比較すると0.75✕0.75(56%)となり
ユニノットのリーダー側でラインブレークすることになる。
さて、五目漁師は今回こんな実験をやってみた。
(本来、こんなことはメーカがもっとちゃんとしたデータを
公表すべきであると思っているのにないので)
つまり、穂先ガイドから魚側のPEにかかる張力と
リールのドラグを滑らせる張力との関係を
実際に調べてみた。
大物に引かれるPEは穂先ガイドから
幾つかのラインガイドを通してリールに導かれる。
PEの張力はPEがラインガイドと擦れることによって
次第に張力を減衰しながらリールのスプールに到達することになる。
メーカーのドラグ設定方法では
竿にリールを取り付けた状態で
PEをガイドに通して、竿を使用状態と同様に立てて
ドラグを設定をすることを進めているのはこのためだ。
しかし、こうすれば直接引き出した場合とどれほどどう違うか
(つまりラインガイドとの摩擦によってどれくらいに張力が減衰するのか)
の説明やデータはない。
この実験をやるために五目漁師は昨年末に
Amazonでこんなものを買った。
最大40kgまで測れるデジタルスケール。
消費税、送料込みで一個520円。
街の釣り具屋さんで買う(もちろん商品は別物)のに比べると
申し訳ないほど安かったのでついつい二つ買ってしまった。
試しに、2Lのアクエリアスのペットボトルを
2つで計り比べたところ2.065kgと2.025kgを表示した。
その差は40gで十分な実用精度はありそうだ。
先ず2Lのペットボトルに水道水を入れて2kgになるように調整する。
次に、こんなふうにリールの代わりにデジタルスケールを
竿(シマノ、ライトゲームSSモデラートType73H225、標準錘負荷30-150号)
に取り付けてペットボトルを持ち上げてみる。
重い。
想像以上に重い。
エッ!2kgってこんなにあるのという感じ。
竿を水平に保とうとすると腕が震えてくる。
スケールのメモリを見ると1.71kgと表示されている。
主にPEとガイドとの摩擦によって
2kg相当の張力が1.7kgに減衰したということだ。
次にもっと竿を煽ってみる。
ヒエー竿が折れる。
最初はブリに近づけるために
ペットボトル2本をぶら下げようかとも思ったが1本でよかった。
これで2kg??
魚体10kgのブリとまともに引きあったら
一体どんなことになるやらと思ってしまう。
この時のスケールの指示は1.5kg。
竿の湾曲によって
PEとガイドの摩擦が更に大きくなり
ドラグを引くPEの張力は益々弱まっている。
この程度はもちろんPEの表面の滑り度合いや
ガイドの数、竿の曲がり特性等によって変わって来るであろうが
ここでは摩擦によって減衰した結果残った張力
(残張力度とでも言おうか)を
1.5/2(75%)~1.7/2(85%)程度としておこう。
もちろん魚が突進する方向に竿全体を向けて
ラインと竿が一直線になるようにすれば、
この値は2/2(100%)になる。
卓越した釣り師は
こんな数字は一々計算しなくても体が知っており、
やばいと思えば
竿を魚の突進方向に寝かせてドラグを滑らせる、
少し余裕があると感じた時には
竿を立ててドラグの滑りを防ぎ魚を弱らせる。
とこんな動作が想像できる。
全体的に整理してみよう。
リーダを使用することによって
既に述べたようにラインの破断限界強力は
PEの強力の56%に落ちている。
ドラグを滑らせるPEの張力は
主に竿のラインガイドとの摩擦によって
海中にあるPEの張力に比べると75%~85%に減少する。
更に例えばPE1号の破断限界の平均値(6kg)は
最大値(8kg)の75%
(DUEL HARDCORE ✕4の場合)であることを考慮すると、
ラインが切れる寸前にリールのドラグを滑らせるための設定は
PEの最大強力の0.56✕0.75✕0.75=0.315倍となる。
例えば最大強力が8kgのPE1号を使ったラインシステムが
魚の引きで切れる前にドラグを滑らせるためには
そのドラグ設定を8✕0.315=2.8kgにしておけば良いことになる。
以上は五目漁師が独自に見積もった数字であるが、
奇しくも最初に根拠がわからないと言った
1/3~1/4の数字が妥当であることを示している。
この値にドラグの滑り出しを設定しておけば
例としてあげたラインが獲物の突進によって
基本的に切れることはないということであって、
獲物が上がるかどうかは全く別問題である。
この値は、言わば釣り師の腕が悪くても
ラインを切られずに済む設定であり、
獲物が根に逃げ込んだり、
アンカーロープに巻きつくのが避けられる設定ではない。
逆にこの値以上にドラグを締め込んだ状態で
魚が竿のシナリや体勢の入れ替えで
対応できる以上のストロークで突進すれば
腕のいい釣り師でさえラインブレークが起こってしまう
ことも意味している。
ふーっ!
やっと長い話が終わった。
最後に(その1)~(その3)の総まとめをやろうと思ったがもういいや。
要するに細いPEによる釣り心地を満喫しながら
突然掛かった想定外の大物との勝負を
絶対的に有利に進められるPEの号数選択などはなく、
そこは釣り師の技量と運次第
(魚が知ってアンカーロープに巻き付くなら
運が悪かったではなく負け)
という当たり前の結論になる。
それでも五目漁師としては
自分なりに納得が出来たので今後は迷わず自分の腕を磨くのみかな?
こんなつまらない記事に最後まで付き合って下さった方は
極少数、いやいないかな?
途中まででもいいです。
いつもの通り、これは違うぞ!おかしいぞ!
などのご意見があればよろしくお願いします。
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