PEラインの号数はどう選べばよいか(その2)
-海水によるアタリ感度の劣化と魚の引き-
前回はPEラインの号数が意図するところに関して調べ
五目漁師流に納得した。
今回は、
PEの号数を落とせばどの程度にアタリ感度が良くなるのか?
逆に号数を落とし細くなったPEでどの程度のでかい魚が上がるのか?
について考えてみる。
五目漁師は2014年2月27日の記事で
6角錘をぶら下げたPEが海中でどの程度に斜めになるかを
比較的ゆっくりした潮流対応で計算した。
風などの影響によってボートと潮流との間に相対速度がある場合、
PEと錘には次の式で計算される抗力(PEと錘が潮流に押される力)が発生する。
D=1/2・ρV2SCD
ここで、Sは抗力を受けるPEと錘の投影面積(潮流に直面する等価面積)、
Vはボートの流れと潮流の速度差、
ρは海水密度、
CDは抗力係数である。
下図のように、
潮流の中にあるPEはビシの重みで下方に引かれつつ
一方で潮流によって横方向に押し流され次第に斜めになる。
斜めになることによって
その投影面積Sは小さくなりそれに伴って抗力は小さくなる。
やがてPEはこれを横方向に押し流す抗力と
下方に引く水中でのビシの重さとが釣り合ったところで
斜めになって落ち着くことになる。
この計算は未だに実証はされたものではない。
また、ここで計算方法について蒸し返す気はないが
次のようなことは言える。
PEの潮流に対する投影面積は
当然のことながらその断面の直径の2乗に比例する、
前回の記事を思い出せば、
このことは、言い換えれば
PEが潮流によって横方向に流される力はPEの号数に比例している。
つまりティップランエギングのイカのあたりや
タイラバのマダイのアタリ感度を邪魔したり、
あるいは底取りを邪魔したりするPEの海水による抗力は
PEの号数に比例して大きくなる。
くどく言うと、
イカや魚のアタリがあった時に
2号のPEは1号のPEに比べると
丁度2倍の外力がアタリ感度を悪くしてしまう
と言うことになる。
釣り師としては当然のことながら
感度の良さを求めて細いPEを使いたくなる。
しかし、一方でPEが魚の引きに耐えられる力は
その号数に比例して小さくなっていく。
ここが釣り師の悩みどころだ。
そこで、ならば一体どこまでPEの号数が落とせるかを
またまた五目漁師流に考えてみよう。
名人は0.6号のPEでも10kgのブリを釣り上げる
という話を聞いたことがある。
先のPEで0.6号の破断限界強力は平均で3.6kgとある。
これで10kgのブリを果たして上げることができるであろうか。
できる。
理論的には0.1号でも10kgのブリを釣り上げることは可能だと思う。
一体、10kgのブリの引きとはどんなものなのであろうか?
極端な話、陸上でぶら下げれば10kg、
しかし、死んでしまって海面にぷかぷか浮いてしまえば
少なくともそこでは重さを感じなくなってしまうはずだ。
そう、ブリが死んでしまうまで待てば
0.1号のPEでも10kgのブリを上げることができてしまう。
それでは、針掛かり直後の元気なブリは
一体どれくらいの力で引くのであろうか。
ネット上でブリの体重の1.5倍から2倍程度というのを見た記憶がある。
経験上、実際にはその程度なのかも知れない。
海中では浮いているとはいえ
10kgという体重による慣性質量によって
ブリの首振りの力は一方的に穂先に伝わる。
その力はブリの体重ではなく
ブリの筋力に負うところが大きいような気がする。
ブリが根に向かって疾走するときに引かれる力も
ブリの体重はあくまでも間接的な影響を及ぼしはしても
直接的にはブリの遊泳力によるものであろう。
この観点からすると、
体長が20cmのキスであっても
強力な筋力のもとに遊泳力が備われば
0.1号のPEをぶち切ることは可能だと言える。
極端な話をしてしまったが
PEの強力限界はブリを引き揚げるために必要なものではなく
ブリを弱らせるために必要な数字と言うことができる。
遊漁船のブリ釣りでは5号とか6号のPEを使うと聞いている。
これはブリが掛かったら
引きを楽しむなどと悠長なことを言っていないで
さっさと上げてしまわないと
他のお客さんに迷惑を掛けてしまうからに他ならない。
一方、同じ大きさのブリを自前のボートや
手漕ぎボートで上げる場合には
細いPEが切れない範囲でブリを泳がせて
次第に弱って来るのを待って上げればよい。
細いハリスでワラサを40分も掛けて上げる釣り師もいるし、
私がたまたま今夏に掛けたブリはPE2号で約20分掛けて上げた。
水深40mで暴れまくったブリも次第に力がなくなり
タモ入れの時にはぐったりしていた。
ブリを泳がせて弱ってくるのを待つと言っても
元気な内に潜られて根に入られてしまったり、
自艇のアンカーロープに巻き付かれてしまったりすると万事休す。
現に、五目漁師が上記のブリを上げた時には
その10数分前にも同様なアタリと引きがあった。
この時は迂闊にもドラグの締め込みが不十分で
あっという間に根に入り込まれバラしている。
(下手くそな釣り師の例)
こんなことにならないように、
PEの強力限界が許す限りにおいて獲物と引き合い、
突然の引きに対しては竿の弾力で逃げたり、
リールのドラグを滑らせて対処するのが
釣り師の技量であろう。
0.6号のPEで10kgのブリを見事釣り上げるか
2号のPEでも切られてしまうかは
つまるところ
釣り場の環境(根やロープがあるいかどうかなど)を知った上で
竿の弾力やリールのドラグ機能を活かして
体重以上の引きで攻めてくる魚に対処する
釣り師の技量に負うところが大きく、
10kのブリを釣り上げるために最低限必要な
PEの号数などは決まってはいない。
漠然とした結論になってしまったが、
次回はPEをぶち切る勢いで走る魚の引きを交わすために
最も有効なリールのドラグ設定や
竿の操り方などについて考えてみることにする。
PEの強力を表示するのにアメリカや欧州ではlb(ポンド)という単位を使う。
kgと同様に質量の単位ではあるが
ゲームフィッシングが発達するアメリカなどでは
表示の意図が日本の場合と全く逆らしい。
日本の場合には
このPEは1号でも7kgまで切れないですよ
というのが売り文句。
ところがアメリカの場合には
この釣り師は強力限界がたった12lbポンドの細いラインで
こんなに大きな魚を釣り上げたという自慢話を満たさせるために
実際の強さよりも弱い糸に見せかけて表示するのが
売り文句になるらしい。
釣り師の技量命のアメリカで売られるPEは
実際にはパッケージに表示されたlb数よりも遥かに大きい力に耐える
というのが一般的らしい。
所変われば品変わる、文化の違いは興味深い。
次回、その3では実験結果なども添えてリールのドラグの締め方、
竿の操作とドラグの滑り方などについて、
またまた五目漁師流に考えてみたいと思います。
もうそろそろ釣りに行けそう海になってきました。
シリーズも次回が最後になります。
本日もポチッとよろしくお願いします。
↓
にほんブログ村
« PEラインの号数はどう選べばよいか(その1) | トップページ | うっ、来たか! まだ釣りたい。 »
「<!ー310考察、概説ー>」カテゴリの記事
- その3 天気予報を上手に利用するために(2022.07.12)
- その2 GPVに関して(2022.06.24)
- その1 五目漁師が愛用の天気予報と利用の仕方(2022.06.20)
- ドテラ流しを考える(2021.02.15)
- またまた完ボの福浦釣行(2016.12.17)
コメント